与那国島で感じた「ロケを支える物流」と日本最西端の現実
2026年の夏、日本最西端の与那国島を訪れました。
人口約1,700人。晴れた日には約110km先の台湾を望むことができる、日本でも特別な場所です。
私自身、以前から『Dr.コトー診療所』のファンでもあり、一度はロケ地を自分の目で見てみたいと思っていました。
今回、その念願が叶いました。
『Dr.コトー診療所』のロケ地を歩いて感じたこと
診療所のセットを目の前にすると、多くの方がドラマの名シーンを思い出されるのではないでしょうか。
改めて作品を見返して驚いたのは、美しい空撮映像です。
現在ならドローンで撮影したと思ってしまう映像ですが、当時はまだドローンはほとんど普及しておらず、実際にはヘリコプターによる空撮が中心だったそうです。
吉岡秀隆さんが自転車で走るシーンでは、ヘリコプターの風圧で飛ばされそうになりながら撮影したというエピソードも残っています。
今では比較的容易に撮影できる映像も、当時は多くのスタッフと莫大なコストを掛けて実現していたことを思うと、改めて作品づくりへの情熱とスケールの大きさを感じました。

ロケを支える「見えない物流」
私たちは普段、ロケ機材輸送やロケバス事業を行っています。
映像作品では俳優や作品が注目されますが、その裏側では照明・カメラ・発電機・美術・音響など、多くの機材とスタッフが全国を移動しています。
与那国島のような離島であれば、その難易度はさらに高くなります。
大型機材を航空便や船便で運び、限られた交通インフラの中で撮影スケジュールに合わせる。
作品が完成するまでには、多くの物流と輸送の力が支えています。

日本最西端だからこそ感じた「国境」の現実
与那国島の西崎(いりざき)に立つと、目の前には広大な海が広がります。
天候が良ければ約110km先には台湾を見ることができ、日本がアジアと向き合う最前線であることを実感します。
私が訪れた日も、海上では海上保安庁の巡視船が警戒・監視にあたっていました。
普段、本土で生活していると意識することは少ないですが、この穏やかな景色の向こうには国境があり、日本の領海や安全が24時間365日守られていることを改めて感じました。
物流も、人々の暮らしも、安全で平和な社会があって初めて成り立ちます。
ロケ撮影や観光を安心して楽しめることも、多くの方々が見えないところで支えてくださっているからこそです。
普段は精密機械や撮影機材を「安全に運ぶ」ことを仕事にしていますが、日本という国もまた、多くの方々が「安全を守る」ことで支えられている。そのことを改めて考えさせられました。

離島ならではの交通事情
実際に島を巡って驚いたことがあります。
島には実質タクシーが1台しかなく、その運転手さんが巡回バスも担当されています。
つまり、
・バス運行中はタクシーがいない
・タクシー対応中はバスが走らない
という、本土では考えられない運用です。
運転代行も1人だけとのことで、人口約1,700人の島ならではの交通事情を知ることができました。
一方で、島には与那国馬や牛がのんびりと放牧され、美しい海と雄大な自然が広がっています。
時間がゆっくり流れる、都会では味わえない魅力にあふれた島でした。

自衛隊駐屯地が島にもたらした変化
島には大きな工場はほとんどなく、主要産業は製糖と漁業です。
しかし約10年前に陸上自衛隊与那国駐屯地が開設されて以降、人口や税収などにも変化が生まれ、地域経済にも一定の効果があったそうです。
物流も地域経済も、人が集まり、仕事が生まれることで成り立っています。
地方や離島ほど、その影響の大きさを実感しました。

私たちが運ぶのは「荷物」だけではありません
ロケ輸送という仕事は、単に機材を運ぶ仕事ではありません。
撮影スケジュールを守り、スタッフの皆様が安心して仕事を進められる環境をつくり、作品づくりを物流という立場から支える仕事です。
今回、実際にロケ地を訪れたことで、その責任とやりがいを改めて感じました。

また、自転車で島を一周したい
今回はレンタカーで島を一周しました。
しかし次に訪れる機会があれば、『Dr.コトー診療所』のように自転車で島を巡ってみたいと思っています。
ゆっくり景色を眺めながら、その土地の空気を感じる。
そんな旅だからこそ見えてくることがあります。
物流も、人も、地域も。
現場へ足を運ぶことでしか分からない価値が、確かにありました。
私たちもこれからも、全国の撮影現場やお客様の大切な機材を、安全・確実に運び続けることで、日本のものづくりや映像文化を物流の立場から支えてまいります。

