【欧州現地レポート】IAA TRANSPORTATION 2026を2日間視察。8年間見続けて感じた世界の物流の変化
現在、ドイツからチェコ・プラハへ向かう列車の中でこの記事を書いています。
9月16日、17日の2日間、ドイツ・ハノーファーで開催されている「IAA TRANSPORTATION 2026」を視察してきました。
私は2018年、2022年、2024年とIAAを視察しており、今回で4回目となります。
そのため今回は単に「最新のトラックを見に行く」というよりも、8年間定点観測してきた中で、
世界の商用車や物流が、どこへ向かっているのか。
そんな目線で会場を歩いてきました。
もっとも、今回もドイツあるあるの鉄道遅延に見事に巻き込まれ、初日も2日目も予定より到着が遅れてしまいました(笑)。
そしてこの記事を書いているプラハ行きの列車では、逆に私が予約時間を間違えており、本来なら乗り遅れているところを、列車が遅延していたおかげで間に合うという……。
ドイツ鉄道の遅延に振り回されながら、最後は遅延に助けられるという今回の旅です。
8年間見てきたIAA。会場の雰囲気は大きく変わった
最初に感じたのは、以前と比べて展示会そのものの雰囲気がかなり変わったことです。
これはあくまで私自身が会場を歩いて感じた主観ですが、2018年頃と比較すると、展示されているものや会場の使われ方も含め、以前よりコンパクトになったように感じました。
以前は「これぞ欧州の商用車ショー」というような、無骨なトレーラーがズラッと並ぶ光景が印象的でした。
今回は、そういった展示がかなり減っています。
一方で、KässbohrerやKRONEなど以前から出展しているトレーラーメーカーも健在です。
細かな技術まですべて確認したわけではありませんが、トレーラーそのものについては「劇的に進化した」というより、熟成や改良を重ねているような印象を受けました。
レーシングトラックの展示も、以前はもっと多かった記憶があります。
クレーン関係ではBEV仕様なども展示されており、個人的には「油圧装置を含め、実際の現場でどのように電動化しているのか」というところが気になりました。
HIABのブースも以前より小さくなったように感じ、最近傘下に入った企業の製品なども展示されていました。

「新技術」から「定番」へ。増えていたエレクトリックアクスル
今回、非常に目についたものの一つがエレクトリックアクスルです。
ただし、これは今回初めて出てきた技術ではありません。
前回2024年のIAAでも展示されていました。
今回感じた違いは、
「新しい技術として展示されている」というより、かなり定番化してきたのではないか
ということです。
トラクタ側だけではなく、トレーラー側の車軸そのものを電動化する考え方で、多くの装置メーカーが関連製品を展示していました。
冷凍トレーラーなどでもeアクスルを組み合わせたものが見られ、さらに車体には曲面にも施工できる太陽光発電シートを組み合わせた展示もありました。
トレーラーを単なる「引っ張られる箱」として考えるのではなく、トレーラー自身でもエネルギーを生み、それを利用する。
2年前には「こんな技術もあるのか」と見ていたものが、今回は当たり前のように複数展示されている。
こうした変化を見られるのも、同じ展示会へ継続して足を運ぶ面白さだと思います。

LNGから、BEV・FCVへ
数年前のIAAでは、
LNGなのか。
BEVなのか。
FCVなのか。
次世代商用車の動力をめぐって、様々な方式が競っていた印象があります。
ところが今回は、私が会場を回った範囲ではLNGをほとんど見かけませんでした。
もちろん全出展車両を確認したわけではありませんので、これはあくまで私が2日間歩いた中での印象です。
感覚的には、
BEVとFCVを中心に次世代商用車を考える段階へ移ってきた。
そんな印象を受けました。
中国系メーカーについては、特にBEVを前面に出した展示が多かったことも印象的でした。

今回、一番驚いたのは中国勢の存在感
そして今回のIAAで、私がもっとも強く感じたこと。
それは、
中国メーカーの存在感です。
2024年に訪れた際、中国系メーカーは会場の端の方に集められているような印象がありました。
その時の記事でも、次の2026年にはさらに増えているのではないか、という趣旨のことを書きました。
実際に2026年の会場を歩いてみると、その存在感は私の予想以上でした。
正確な出展社数を数えたわけではありません。
あくまで私個人の体感ですが、
「大げさに言えば半分くらい中国系なのでは?」と思ってしまうほど、至るところで中国企業を目にしました。
もちろん、これは統計的な数字ではありません。
それほどまでに、2024年とは違う存在感を感じたという意味です。
完成車だけではありません。
ハブ、アクスル、LEDをはじめとした各種部品メーカーまで、多くの中国企業が出展していました。

「BYD ♥ IAA」に感じたもの
BYDも非常に大きな展示を行っていました。
そして印象に残ったのが、会場内を走っていた無料シャトルバスです。
私が乗ったBYDのバスの電光掲示板には、
「BYD ♥ IAA」
と表示されていました。
思わず「そこまで来たか」と感じました。
中国メーカーが乗用車だけではなく、トラックやバスを含めた世界の商用車市場でも、一気に存在感を高めようとしている。
以前は「欧州メーカーの展示会に中国メーカーも参加している」という印象でした。
今回は私の目には、場合によっては欧州勢の方が押されているのではないか、と感じるほどでした。
IAA公式でも2026年は国際出展が非常に多く、中国企業が特に強く代表されていると発表されています。
現地を実際に歩いてみると、その数字以上に勢いを感じました。

見た目はトップメーカーに近づいた。しかし商用車は長く使って分かる
中国系トラックの外観を見ると、以前のような「いかにも新興メーカー」という感じはかなり薄くなっています。
Mercedes-BenzやSCANIAなど欧州トップメーカーと比較しても、見た目だけならかなり近いところまで来ているように感じます。
デザインについては個人的にはまだ洗練されていないと感じる部分もありますが、この進化のスピードは驚異的です。
一方で、私は車両を実際に仕事で使う側です。
トラックは、展示会場で見ただけでは品質は分かりません。
ハブ一つ。
LEDパーツ一つ。
足回り一つ。
100万km、あるいはそれ以上走った時にどうなるのか。
耐久性、部品供給、修理体制、そして長期間使用した時の品質。
ここはこれから見ていかなければならないところだと思います。
「見た目が欧州トップメーカーに近づいた」ことと、
「長期間酷使される商用車として同じ品質なのか」
は別の話です。
しかし、この開発速度と勢いを考えると、
「中国製だから」
という一言だけで片付けてしまうのも危険だと思います。
ミラーは消え、デジタル化はもはや普通に
運転席周りについても、デジタル化はかなり当たり前になっていました。
従来の大きなサイドミラーではなく、車外にはカメラやセンサー。
車内には細長いタブレットのようなモニター。
以前なら「未来のトラック」と感じた装備が、もはや特別なものではなくなっています。
一方、自動運転については、小型配送車などの展示はありましたが、私自身は会場全体が「自動運転一色」というほどの熱狂は感じませんでした。
技術として進化していることと、展示会で何が一番注目されているかは、また別なのかもしれません。

私が一番食いついたのは、最新EVではなく「工具箱」
そんな最新技術が並ぶIAAですが、今回私が妙に気になったものがあります。
低床トラックの3〜4軸間、前後のタイヤの間に取り付ける逆台形の引き出し式工具箱です。
以前から「これ、いいな」と思っていました。
日本の低床トラックは工具箱を取り付けられるスペースが非常に少ない。
以前、日本の大手ボデーメーカーに相談したことがありますが、
「そんなものはできない」
と言われ、そのままになっていました。
しかし今回、改めて現物をじっくり見ると、
「いや、これなら日本でもいけるんちゃう?」
と思えてきました。
そこで試しに一つ輸入して、実際に当社の車両で使えないか検討してみたいと思っています。
初めてIAAへ来た方なら、派手なエアロや巨大なディスプレイ、新型EVなどに目が行くと思います。
もちろん、それも面白い。
ただ、実際にトラックを買い、架装を考え、毎日仕事で使っている立場になると、見る場所が少し違ってきます。
「これを自社の車両に付けたらどうなる?」
「この構造なら、今まで困っていたことを解決できないか?」
私がIAAへ来る理由は、案外こういうところにあるのかもしれません。

欧州のアルミ・ステンレス加工は、やはり美しい
これは毎回来るたびに思うことですが、欧州のアルミやステンレスの加工技術は本当に素晴らしい。
トラックの部品でありながら、
「これは芸術品やな」
と思うような仕上げのものがあります。
機能だけではなく、美しさまで成立させる。
車両づくりに関わる者として、ここは毎回刺激を受けるところです。

8年間で変わったのは、トラックだけではない
余談ですが、8年間見続けていると来場者の服装まで変わったことに気づきます。
以前は欧州の展示会というと、スーツのセットアップでビシッと決めた人が非常に多かった。
今回はジャケット+パンツ、そこに白いスニーカーというスタイルが圧倒的に多く、ネクタイを締めている人はかなり少なくなった印象です。
商用車だけでなく、欧州のビジネススタイルそのものも、この8年間で変わったのかもしれません。
そして展示会の外に出ても、日本との違いを感じる
ベルリンの住宅地を歩いていると、普通に大型トレーラーが走っていました。
どうやら工事現場へ向かっているようでした。
日本なら住宅地に大型トレーラーが入れば、色々なところへ相当気を遣う場面です。
しかしこちらでは、ごく普通に走っている。
必要だから走る。
必要だから入る。
良し悪しではなく、何に関しても合理性を優先する欧州らしさを感じました。
2018年から見続けて、2026年に一番感じたこと
2018年からIAAを見続けてきました。
その間にEVが増え、自動運転が注目され、LNGや水素が登場し、デジタル化も進みました。
eアクスルのように、前回は「新しい技術」として見ていたものが、今回は普通に複数のブースで見られるようになったものもあります。
一方で、パーツ一つひとつを見ると、劇的な技術革新というより、既存技術をさらに熟成させる段階に入っているものも多いように感じました。
そんな中で今回、私にとって最大の変化は、技術そのものではありませんでした。
中国勢の存在感です。
2024年にも、その兆しは感じました。
しかし2026年は、一段違いました。
もちろん、品質や長期耐久性については、これから実際の市場で評価されていく部分も多いでしょう。
しかし今の開発速度、資金力、そして今回のIAAで感じた存在感を見ると、
「まだ品質が分からないから」
だけで片付けてしまうのは危険だと思います。
次の2028年。
この会場がどうなっているのか。
今から非常に興味があります。
そして私たちのような日本の中小物流会社が、世界の流れをそのまま真似する必要はありません。
しかし、
世界で何が起きているのかを、自分の目で見る。
その中から、自社の輸送品質を高められるものを一つでも持ち帰る。
それが、私が定期的に欧州へ足を運ぶ理由でもあります。
たちばな運輸は、これからも車両、技術、人、そして現場での経験を大切にしながら、
「難しい輸送なら、まず相談してみよう」
と思っていただける物流会社を目指していきます。
最後に――ドイツ鉄道の遅延に救われました(笑)
さて、そんなことを書きながら、現在はプラハへ向かう列車の中です。
今回、IAAへ向かう初日も鉄道が遅延。
2日目も遅延。
そして今日。
予約していたプラハ行きの列車の時間を私が間違えており、気付いた時には本来ならすでに出発している時間でした。
ところが――
列車が遅延していたおかげで、間に合いました(笑)。
散々振り回されたドイツ鉄道の遅延に、最後は助けられる。
何とも今回のドイツらしい締めくくりとなりました。
次回は、ドイツからチェコへ鉄道で国境を越えながら感じた、日本とは違う欧州の交通や物流についても書いてみたいと思います。
写真について
今回撮影したIAA TRANSPORTATION 2026の写真は、Facebookにもアルバムとして掲載予定です。
ブログでは紹介しきれなかった車両、トレーラー、架装、部品、最新技術なども掲載しますので、ご興味のある方はぜひそちらもご覧ください。
