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運転は直接カラダで感じろ!イニシャルDに学ぶ、事故らないプロの車両感覚

こんにちは。すっかり梅雨時ですね。やはり雨天や積雪時にスリップ等による事故は多いですが、本当のプロドライバーはどういう事に気をつけながら運転しているのか?その辺りを書きました。

運転とは理屈である

「あの人は運転が上手だ」「バックがとても上手」「接触などの事故をしない」などはよく聞かれると思いますが、実際のところこれってなんなのでしょうか??あくまで私の持論ではありますが、車はタイヤが滑るような速度域までは、ほとんどの事が理屈であると考えています。例えばボディのホイールベース間に擦った傷があるとしましょう。自責での傷跡だとすれば、単にハンドルを切るのが早すぎると想像します。思い出して下さい。自動車免許を取得する際に多くの方は教習所に行かれたと思いますが、縦列駐車の際などに教官から「タイヤがこの位置に来たらハンドルをめいいっぱい切る、ミラーでこの部分と車体が一直線になればハンドルを真っ直ぐに戻す」とか教えられた記憶はないでしょうか?車の動きには全てこういう理屈があり、それを忘れたり勘でハンドルを切ったりするから接触などの事故が生じる訳です。無論ハンドルを早く切ったとしても、ミラーで内側との距離を確認しながら近すぎる場合などは戻せばいいだけですし、離れていって曲がりきれない時などは切り足せばいいだけです。これらはほんの一例ですが、ほぼ全ての運転操作には理屈がありますので、一度車庫などで車の周りからハンドル操作からの車の動きを想像してみられてみてはいかがでしょうか。

理屈が通じない車の動きとは

では理屈が通じない車の動きとはどういう動きでしょうか?一言に言うならば、タイヤのグリップ力等が限界を超えた時です。一流のレーシングドライバーなどは一般のドライバーに比べもっと高いレベルで理屈を理解し操作しているのですが、そのような人は全運転人口のごくごく僅かな人だけです。よくタイヤが滑るとドライバーから言われる事があるのですが(タイヤの性能面が正常な状態で)、よほどのウエット路面や積雪時、路面にオイルなどが付いている等の場合を除き、キチンとタイヤに溝があれば制限速度内で滑る事はほぼあり得ません。逆にそれでも滑るというのであれば、メカニカルトラブルを除けば「タイヤが滑るほどの運転しているの?」と言う事になります。

※エアドライヤのオイルやミッション・エンジンオイルが漏れていてそれが後輪に付着して滑るという事はあり得るが、その場合はメカニカルトラブルなので別の処置が必要。無論、実際に滑るという報告があれば上記のような可能性もあるので確認は必要です。

タイヤ以外に理屈が通じない動きとは?

先ほどはタイヤのグリップ力の限界が超えた時と書きましたが、それ以外にもあります。トラックの場合、積載物の重量や嵩、偏荷重などによる車体の重心の変化から来る動きです。物理学の先生などが証明すればそれも理屈が通じるかもしれませんが、それを一般のドライバーが理解して操作するのは無理かと思います。例えば極端な後荷重の場合で更に勾配のキツイ登り坂での鋭角ターンがあるとしましょう。空車で制限速度内では普通に考えられる軌跡で曲がれますが、先ほどにお伝えしたような偏荷重のような条件だと、フロントタイヤにしっかり荷重がかかっていないので、コーナーの外側に滑っていき、想像していた軌跡より大きな軌跡となって曲がりきれない可能性が出て来ます。逆のパターンもあり得る訳でして、極端な前荷重で勾配のキツイ下り坂の中速コーナーがあったとします。そのコーナーの手前は下りの直線で、直線部分でその先のコーナーを曲がれる速度に落とさないと、少しハンドルを切った状態でブレーキングしてコーナーリングを開始していくと、通常では考えられないような低い速度で後輪が外側に滑り出し、車はスピンモードに突入していきます。スピンならまだしも、横転する可能性も出てくる訳です。

通常の積載方法や定量積載だとこういう事は起こりにくいですが、荷重や路面状況の変化やタイヤの溝の残など、多くの要因が重なるといとも簡単にタイヤのグリップ力の限界を超えてしまい、事故に繋がります。無論先ほどの一流のレーシングドライバーやラリードライバーはこういう状況でも車を操作していくのですが、そこにはやはり経験と勘とあらゆる場面でも操作を自身の支配下に置ける高い技術力があります。その辺りはトラックやバスの超ベテランドライバーでも同じで、いつもと違う車の動きや荷重を感じれば、通常時とは違うアクセルワークやブレーキング操作にハンドル操作をほぼ無意識にやっている訳です。ベテランに事故が少ないのは、こういう理由が大きいと思われます。

一流のドライバーは何を考えて走っているのか?

車を運転していると、メーター類から様々な情報が入って来ます。最近は音声による案内も多く、トラックにも目線の動きなどから休憩を促して来る音声案内もありますよね。そういう補完的な部分はともかくとして、実際にドライバーが直接触れている部分はハンドルとシートのお尻が一番大きいかと思います。ハンドルに伝わってくる路面の轍やギャップの感触、ハンドルの重さで分かるタイヤの接地感に荷重のかかり方、シートを介してお尻に伝わる後輪の接地感に路面を蹴飛ばすグリップ力などなど、様々な車両の情報が入って来ます。

近年の高級乗用車や最近の商用車もそうですが、こういう路面の状況などがドライバーに伝わりにくいようになって来たと思います。こういう路面の状況などはセンサーが検出して判断・制御するもの、不快な感触は乗っている人には感じさせない、そういう風な流れかなと思います。がしかし、こういう制御や乗り味の綺麗さがドライバーに運転が上手だと錯覚させてしまい、自身が制御出来る速度域をいとも簡単に越えてしまって大きな事故に繋がっていると私は思います。

センサー類からのメーターパネルの情報も重要ですが、一流ドライバーはこういう体に直接伝わって来る情報をほぼ無意識のうちに感じ取り、的確な操作をしています。外から入って来る音もそうですし、センサー類が感知しない異常な音も車の悲鳴として聞き取り判断している訳です。車の異音一つにしても、様々な音の種類があります。回転系の音なのか打音なのか擦れる音なのか。万が一センサーやOBD(オンボードダイアグノシス)に現れない故障だとしても、故障探求していく上で的確な表現の音質が分かると、故障箇所も早期に発見する事ができ、より大きなトラブルになる前に修理する事が可能です。

荷台の貨物の状況をどう感じ取るか

最近は荷室内にドライブレコーダーを付けているトラックもいますが、実際のところはまだまだかと思います。しかしながらドライブレコーダーを荷室内に装着していても、きちんとした固縛をしていなければ、急の付く操作をして荷物が崩れる映像が保存されるだけになりますし、なんの解決策にもなりません。車の運転で急のつくハンドル操作やブレーキ・アクセル操作をすると、横に乗っている方もおろか、運転している自分も体がのけぞる時もありますよね。つまりあれと同じGが貨物にもかかっている訳です。人間ならまだとっさにアシストグリップやシートベルトがありますが、荷物は固定してるラッシングベルトや緩衝材くらいしかありません。急ブレーキをかけるとダッシュボードに載せているものが吹っ飛んでいったりとかはよくある事ですが、同じ状況が荷室内でも起こっているんです。

ではどうするか?ですが、運転している時にどの方向のGが一番かかるのかを考えて貨物を固縛するのが一番重要です。左右の横揺れに比べ、縦方向の特に減速Gは想像以上の力がかかっています。トラックの場合、加速Gはそこまでではありませんので(しゃくると荷崩れはします)前方向にズレる事を想定して固縛をセットしていかねばなりません。

上記はほんの一例ですが、ようは自身の運転(ブレーキ・アクセル・クラッチ・ハンドル)操作でどの方向にGがかかるかを考え、お尻でそのGを感じ取り貨物の気持ちになって予測していく事が重要です。ラップや緩衝材やラッシングベルトを使用していても、車が動くとたえずその荷締め具にテンションはかかっている事になります。そこを感じ取り丁寧に固縛をし、貨物にGをかけない運転操作が求められる訳です。大ベテランで長年荷崩れ事故を起こしていないドライバーは固定方法の技術ももちろん素晴らしいですが、常日頃からこのようなGのかからないような運転をしている訳です。

リフトマンの荷締めアドバイスは絶対に信用できるか?

答えから伝えますとNOとなります。よく荷崩れ起こしたドライバーから報告を受ける時に「リフトマンがこの積み方でいいと言った」という事を聞きます。リフトマンにドライバー上がりも沢山おられますが、最近はそこまで多くないように思われます。リフトマンは静止状態の荷物やリフトの速度に揚げ下げ、自動倉庫のラックのGは理解していますが、実際にトラックに積まれて走っている時のGは想像がつかないと思います。貨物の固定してはダメな弱い部分や、固定する時に推奨される場所はもちろんリフトマンの方がよく分かっているでしょう。しかしながら積み込みが終わりトラックが一旦動いてしまえば、そこからはドライバーの荷締めの強さやベルトの掛け方が一番重要となります。推奨される荷締めの場所であってもユルユルの荷締めでは、全く意味がありません。最近はベルトの張力が分かる道具もありますが、やはり先ほどお伝えしたように貨物にかかるGを予測して固縛していかねばなりません。

イニシャルDの名セリフは核心をついている 「もっとアクセルを開けろ。もっとだ。コップの水、一滴もこぼさずに走ってみろ。」

アニメにはなりますが、このセリフは藤原拓海が父親の藤原文太から運転技術を教わる際に使われた有名なシーンのセリフです。実際には不可能な事とは思いますが、車の荷重移動やバランス感覚を養うためには重要な教えであります。コップやペットボトルなど運転中に転げるとペダルに挟まり大きな事故に繋がりますが、肘置きやモノ入れの上に置いているスマホなどが転がったり滑ってフロアに落ちた経験ある方は多いと思われます。つまり、あの動きこそが荷室内で起きている事なのです。それを想像して固縛に応用すると、貨物の状況が随分と理解できて荷崩れ事故も減るのではないでしょうか。

 

いかがでしたでしょうか。もちろん貨物には滑りやすい性質のものや円形などの不定形のモノも多くあります。現在よく積み込みされる貨物に対して、こういう視点で固縛や自身の運転操作を見直されてみるのもいい機会と思いますので、一助になればという思いで書いてみました。内容に独断と偏見も多くありますが、参考にしていただければと思います。

 

全国を走り続けているトラックやバスにこういう事故が少しでもなくなりますように心より祈っております。